とにかく、オススメの一冊。内容はもちろんのこと、新しい読書体験というのが、今日のブログの本旨だ。
ある時、安冨歩氏の本はジェットコースターのようだと評されているのをツイッターで見かけ、いたく共感したのを覚えている。
僕も、読んでいて同じような不思議な感覚を味わう。これが何なのか、初めはわからなかったのだが、最近、少しづつ理解してきた。
それは、例えば、物語を読んでいるとき、自分が主人公になったり、鳥のように俯瞰する視点を持ったりするのと、似ていて非なる感覚。
ずばり、安冨氏の頭脳の働き、作動を擬似的体験できるということなのだ。
『つまり、DNAというのは、安定したデータベースではなく、常に崩壊しつづけており、それをタンパク質が、常に修復しているので、維持されています。ということは、主導権はDNAではなく、DNAやタンパク質などから構成されている相互依存ネットワーク全体にある、と考えざるをえません。(附論p294)』
ここに示されているDNAの話と同じように、安冨氏は一つの問題を、一つの側面だけで考えるというようなことは決してせず、常に多面的に考察し、総合的に解決しようとする。
本書の目次だけを追っていっても、「東大話法」に始まり、「論語とサイバネティックス」「田中角栄主義」「ヴェルサイユ条約」「靖国精神」「なでしこジャパン」などなど、どこがどう繋がっていくのだろうと感じるワードのオンパレードだが、それが実に上手く論理展開していき、見事に結実する。
その安冨氏の頭脳の回路、もしくは回廊とでも言おうか、それを読書とともに擬似体験するような感覚があるのだ。
それは、まさしくジェットコースターそのものである。
僕のもともとの頭脳では到底追いつかない思考の速度を体感するというのは、実に不思議だ。何だか、頭が良くなったような錯覚まで起きる。
その作風というか、いわゆる速度感は、最新作『ジャパンイズバック』でも遺憾なく発揮されているので、新しい読書体験として、ぜひ触れてみてもらいたい。
ちなみに、本書のp239に記載がある『PRBC構想』にいたく感銘を受けたため、自分のためのメモとしてここに追記しておく。