老人との出会い
Windows Rockという街の名前を知ったのも単なる偶然だった。
旅行中に立ち寄った、グランドキャニオンの登山口あたりとなるFlagstaff という街から、ニューメキシコ州の州都Albuquerque (アルバカーキ)へと向かうグレイハウンドのバス停でバスを一人で待っていた時のことだった。
年老いたネイティヴアメリカンが僕に近づき話しかけてきた。
「にいちゃん、あんた何族だ?」
驚いた僕は頭を振り、日本という国から来たということを告げた。
そんなことから会話が始まり、その老人の今の暮らしぶりやネイティヴアメリカンたちの置かれている辛い日常にまで話が及ぶ。
「僕はあなた方がどんなところで、どんな風に考えて暮らしているのか、知りたくてここまで来たのです。」と言うと、
「それなら、今度の日曜日にWindows Rockへ行ってみたら良い。ちょうど祭をやってるよ。」と教えてくれたのだった。
その老人とはそこで別れたが、彼はバスを待っていたのではなく、娘さんの里帰りを待っていたのだった。
「今日は娘が、3年ぶりに帰ってくる。娘には俺みたいな苦労をかけたくないので、英語の教育を受けさせ、白人のいる学校へ行かせた。娘は今では立派な軍人で、今日その任地であるアジアから戻ってくるんだ。」
老人は英語の読み書きができない、農夫であった。