ギター少年の子守唄 〜その1〜

僕がギターを弾き始めた話を少し。初めて手にしたのは14歳、中学2年生のころでした。


 


池田邦太郎先生が、音楽室で昼休みにギター教室をやっていたのは、もう一年も前から知ってた。池田先生は、NHKの子ども向け音楽番組に手作り楽器を紹介したりしていたので、ちょっと名物先生でもあり、不良の生徒にも理解ある優しい先生だったのだが、そんな噂を耳にしても行くつもりはなかった。

理由はいくつかあったのだが、全て言い訳だった。要は、『どうせ俺なんかにできる訳がない。』という諦めだ。このマインドはいつだって、どこだって、なんだってついてまわる死神のようなやつだ。運動会でのかけっこも、鉄棒も、絵も、その時がんばっていた水泳でさえ、そう思っていた。

でも、本当はギターを弾けるようになりたかった。その頃はもうロックにどっぷり浸かっていて、お年玉で買った愛用のウォークマンから流れる激しいギターの音に心ふるわせていたものだった。

中学2年になり、音楽の担当が池田先生になった。「君たちの好きな曲、なんでも構わないからレコードを持ってくれば、一曲授業の頭にかけてあげる。遠慮なく持ってきなさい。」僕は飛び上がって喜んだ。クラスの連中にハードロックをお見舞いしてやる。坊主あたまの少年はレンタル店でハードロックのレコードを借りて持参した。最初の一枚は伊藤政則氏も推薦の ”Scorpions / Love at First Sting”。かけてもらったのは一曲目の”Rock You Like A Hurricane” ミディアムテンポの重厚なリズムと、冒頭からいきなりくるツインギターのハモりも印象的な曲だ。


クラスの子たちが誰も知らない曲。僕は得意満面だったが、反応は異様に薄く、むしろみんながクスクスしているような気がする。「坊主でロックなんてね…」「なんだかウルサイ曲だね〜」ムキになればなるほど孤立していくような感じだった。

<その2へ続く>

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ギター少年の子守唄 〜その1〜 への2件のフィードバック

  1. ikedakunitarou より:

    帝京平成大学現代ライフ学部児童学科で音楽を担当している池田です。
    今日の大学の講義は90分4コマの計6時間!やっと前半の2コマを終え研究室に戻ってきた。でもって何となくパソコンで自分の名前を検索してたら君の「ギター少年の子守歌」を発見!!
    澤田君の人生にこんな影響を与えていたとは!君から直接話は聞いていたけれど、文章上手いね!ちょっと感動したよ!

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