
吉祥寺アップリンクで鑑賞してきました。洋画(これもちょっと死語か…)につけられた邦題について、これまでも時々思うところはあったけど、このタイトルは如何ともし難い。ある種のイメージを伝えすぎていて、作品のテーマから乖離している。観客は邦題、触れ込み、ポスターのイメージなど、知らず知らずのうちに先入観として持ってしまうから、作品の持つテーマと離れすぎているということは、バラバラの情報を統合する時間を要してしまうということに他ならない。少なくとも本作品では僕はそう感じた。
本当のタイトルは“Minding the Gap” (段差に注意しながら)。オープニング、スケートボードで街中を滑走し、華麗な技を決めながら段差を易々と超えていくそんなシーンとマッチさせたタイトルだ。だが、本作品のテーマとして描かれるGapは物理的なものではない。親と子、男と女、大人と子ども、人種、貧富、教育など、若者たちを取り巻く社会全体にある「格差」とそこから生まれる「暴力」についてだ。
本作品でデビューを飾る新鋭、Bing Liu監督はこのドキュメンタリーを通じ、自分自身が抱える心の問題を超えて行こう、解決しようと試みる。
公式サイトの監督インタビューを引用しよう。
明確になったことは、暴力と、暴力によってクモの巣のように広がる影響は、大部分で永続されてしまうということです。これらの問題は文字通りにも比喩的にも、扉の向こうに留まってしまうから。僕の願いは、『行き止まりの世界に生まれて』の中で扉を開いてくれた登場人物たちによって、同じようなことで苦労している若い人々が勇気をもらい、彼らがその状況を切り抜けられること、生きて、自分たちの物語を伝えられること、そして自分たちの力で人生を作っていけるようになることです。
http://www.bitters.co.jp/ikidomari/
何度も挫折しそうになり、身体中の痛みや怪我に耐え、それでもスケートボードに向き合ってきた彼らが大人になったいま、僕らに何を伝えようとしているのか。それをしっかりと受け止めたい。そう感じさせてくれる映画だった。単なるスケボー青春ムービーでないことだけは、書き留めておく。