寄れた波間で流されないように漂いながら、霊山を眺めている。
しばらく湘南はサイズが上がらず、なかなか足が海に向かなかったが、今週は月曜、水曜とサーフィンできて、久しぶりに気持ちがいい。
ここ一ヶ月くらいでだいぶ寒くなり、冬用のセミドライを引っ張り出した。スリーシーズン目に入り少々硬さも感じるが、これが無いとやはり冬は厳しい。特に今週は急に寒さが厳しくなってきたから余計だ。なんならブーツもそろそろだろう。
勘違いしてもらったら困るのは、冬の波乗りも悪くないということ。とりわけ晴れた日の冬のピンと張り詰めた空気は嫌いじゃない。今日みたいに波が落ち着かない日はどうせ泳ぎっぱなしで寒くなることもないし、ウェットスーツのおかげで暑いと感じることもあるくらいだ。
こうして季節の移り変わりを感じながら、いつまでもいつまでもサーフィンして、毎日が同じように過ぎていったらどれだけ幸せかと思うことがある。
性格なんだろうか。決まったことを決まった通りにするのが好きだ。変化はあまり欲しくない。新しいものは好きだけど、自分の生活リズムが変わったりするのはとても面倒だ。ましてや、社会や他者との関係の中で訪れる変化はできれば避けたい。もちろん、そうはいかないのが人間の常なのだけど。
誰が悪いとか、俺のせいだとか、社会のせいだとか、取り止めもなく頭に湧き上がる言葉にうんざりする。今はせめて波に集中したい。それだけだ。
富士山の黒い地肌にダラダラと白い雪を垂らしたような冬らしくない出立ちも、このまとまらない、少しイライラしたような気持ちを逆撫でするかのようだ。
帰路の途中で良く立ち寄るラーメン屋のゆず塩味のスープだけが、いつもとか変わらず、ホッとする。どうせ、あと何日もすれば、嫌なこともすっかり忘れて日常が戻るのだ。まあ、いいじゃないか。今は、火傷気味な舌ですする熱いスープを楽しもう。
さあ、冬がはじまる。