2024.5.18 アーティスト・クリエイターの心の相談室

アーティスト・クリエイターの心の相談室 創作活動の不安とつきあう

盟友、手島将彦さんの新著「アーティスト・クリエイターの心の相談室」を読み終えたので、感想を。

社会は多くの課題や問題を抱えながら、進んでいく。その多くが、すぐ解決できることでないのは、これまでの歴史を見れば明らかで、一人一人の考え方が変わらなければ、どうにもならない様な事であれば、なおのこと時間がかかる。

それでも、時間をかけてでも、とにかく改善していかなければならない問題がある。


ここで、日本国憲法 第三章を参照したい。

第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

第十二条にあるように、自由や権利は、国民自らの努力によって保持しなければならないのであって、言いかえれば、その努力を怠れば蔑ろにされてしまうシロモノだ。

第十四条は、かなり具体的に踏み込んだ内容になっているが、現実にはこれらが守られている、あるいは個々人が守ろうと努力しているとは如何とも言い難い。


そういった現状をただ傍観するのではなく、行動で変えていこうとする人たちがいる。形は様々だが、一人一人の考えを変えていくためには、不毛な大地に種を蒔くような地道な作業も必要なのだ。

そんな一人が、この手島将彦さんだ。

手島さんはご自身の仕事に絡めた形で、心の問題、いわゆるメンタルヘルスについてこれまで新著を含めて3冊出版されたが、そのどれもが、手にとって読んだ人の心根に触れるような筆致だ。生きづらさを感じている人の問題を解決してあげたいと心から願っているのがわかる。と言っても決して主観に頼っている訳ではない。膨大な資料、専門書を引用し、エビデンスを元に論理的に説明されているので、信頼度も高い。

とりわけ新著はQ&Aで書かれているので、利用価値が高いと思う。入口は、アーティスト、クリエイターとなっているが、実際に読んでみれば、それが生きづらさを抱える誰にとっても当てはまるのがすぐにわかるはずだ。

僕は場末のアマチュアミュージシャンの一人として、本書を読み、ずいぶんと救われた。また、プロの指導者として、選手や生徒、児童、あるいは保護者、とりわけスタッフとの関わりにおいて、学んでおきたいこと、知りたいことの多くがここに書かれており、場面場面に応じて使えるということを実体験している。


「国民の不断の努力」とは具体的に何かは、それぞれが判断すれば良いことだが、こういった本を手に取り、学ぶこともその一つなのではないかと、僕は思う。仮に当事者ではなかったとしても。

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